米海兵隊岩国航空基地 -- 3年に一度、荷物をまとめるほろ苦い儀式が再 び行われ、新たな旅立ちへと導かれる。それ ぞれの旅立ちは、現在進行中の改革と適応の物語に新たな章を刻む。
イワクニ・インターミディエイト・スクールと M.C.ペリー・プライマリースクールの美術教師であるニコル・コルバーンさんは、成長する過程でこれらの出来事を直接体験した。米海軍に勤務する父親を持つことで、ユニークな機会や経験を得たり、旅行や米国防省教育部(DoDEA)のような軍人の家族を支援する組織で働くことができた。DoDEAの使命は、軍と関係のある学生を教育し、参加させ、ダイナミックな世界で成功する力を与えることであるが、それを体現する教育者としてコルバーンさんほど優れた例はない。
コルバーンさんはマサチューセッツ州シャーリーで生まれ、その後、メイン州、メリーランド州、スペイ ン、カリフォルニア州、トルコ、バーレーン、そして現在の日本へと移り住んできた。コルバーンさんの父親は海軍に勤務していたため、3年ごとに移動する赴任地で、彼女の母親は地元の学校の教師として働いていた。常に移動し続けていたコルバーンさんにとって、変わらないものはほんのわずかしかない。それは家族と創造性を発揮することである。このような幼少期のライフスタイルが、現在、彼女が人生で一 番好きなこと、つまり、世界中を旅して美しい美術を目にしながら、自分自身の創造性を発揮することの舞台となった。
大人になり、コルバーンさんはメリーランド大学で美術史と美術教育の学士号を取得した。卒業後すぐ、さまざまな立場の子どもたちを教えたいという母の遺志を継ぎ、彼女はDoDEAの教師になった。今、彼女は世界中を旅して、数年ごとに新しい場所に移りながら、 さまざまな国の生徒たちに美術を教えている。DoDEA の美術教師になって以来、コルバーンさんは何千人もの生徒を指導し、その国独自の美術や歴史を通して、それぞれの国の文化を直接体験してきた。
子供の時も大人になってからも、数え切れないほどの引っ越しを経験してきたコルバーンさんだが、最近の引っ越しは特に大変だったと感じている。5年間住み慣れたバーレーンは、彼女にとって心からくつろげる場所であった。そこを離れ、文化や日常生活のさまざまなことに適応しなければならない日本で生活することになったのだ。
「スポンサーである校長が空港に迎えに来てくれていたのですが、雨が降っていました。すべてが灰色に見えて、ただ泣いていました。」とコルバーンさんは当時を振り返る。
新しい環境に適応するのは、最初は難しいかもしれない。特に、5回目とはいえ、慣れない異国での生活となるとなおさらである。それでもコルバーンさんは、岩国基地周辺や日本各地のフリーマーケットや小さな店、ギャラリーに出向き、地元のコミュニティに身を置くことで、ようやく日本での生活に適応し始めた。
日本に来てからも、旅行や地元のアートや歴史に触れることへの彼女の情熱は衰えていない。これまで住んできた他の場所と同じように、コルバーンさんは日本にあるユニークな美術や文化を探求することに多くの時間と関心を注いできた。
イワクニ・インターミディエイトスクールのホアイミー・ウィンダー校長は、「コルバーン先生は、指導の中で生徒たちにアートを広めてくれました。彼女はただ、絵を描くというだけでなく、そのプロジェクトの背景にある歴史や美術哲学について生徒を指導してく れました」と話す。「より多くの現代アーティストを紹介するために、多くのクラスを受講してきました。」とコルバーンさん。他の人は見過ごしているような美術体験を紹介したり、美術館を訪問したり、さまざまな時代の美術を調べることは、重要な役割を担って いる。このような活動は、人々が創造的なプロセスをより具体的に見て理解するのに役立ち、ある一部の人にとっては当たり前のことかもしれないアートに新鮮な視点を提供する。つまり、視野を広げ、心に創造性を呼び起こすことが大切なのだ。
生徒の指導とサポートに加え、コルバーンさんは岩国基地の生徒のためのアート・プログラムを企画し、 充実させることに多くの時間を費やしている。彼女は岩国基地の生徒全員にスポットライトを当て、彼らの美術を世界と共有する機会を彼らに与えている。
「コルバーン先生は、生徒たちに最初からすべての基本を教えようとしています。生徒たちがしっかりした基盤を築き、悪い習慣を身につけないようにするためです」とウィンダー校長は話す。コルバーンさんが岩国基地で活気に満ちたアート・コミュニティを築くことをどれほど大切にしているかがうかがえる。
その活気に満ちたアート・コミュニティの一員として、コルバーンさんは生徒が興味を持つような授業内容を作ることに専念し、生徒の個々のニーズに合わせて各セッションを独自に調整できるようにしている。彼女は、ダイナミックで個別化された学習体験を作り出しながら、生徒を魅了し、夢中にさせるカリキュラムを作っている。
生徒たちの創造性について、コルバーンさんは 「子供たちが(美術以外の)別の道を選択したり、それぞれが別々の道に進んでいく様子を見るのが好きです。」と語る。「学業での成功がすべてではありません。」
さらに、コルバーンさんは休日を利用して、ホワイトハウスのアート・プレゼンテーションの手伝いをすることもある。ホワイトハウスのアート・プレゼンテーションとは、岩国基地の生徒たちがホワイトハウスに自分の作品を展示する機会を得るというものだ。コ ルバーンさんは地元の学校の美術教師に連絡を取り、生徒たちの作品を集めてコンテストを行った。そのうちの何人かは賞を受賞し、選ばれた生徒はホワイトハウスに自分の作品が飾られた。これは、美術を広め、生徒たちに自分たちの能力を世界に示すチャンスを与えようとするコルバーンさんの献身的な姿勢を示すものである。コルバーンさんは25年以上にわたって美術を教えているが、それを続けているのは、それが彼女の情熱だからだ。彼女は生徒だけでなく、出会うすべての人と情熱を分かち合いたいと願っている。彼女は伝統的な美術の教師ではないかもしれないが、それこそが彼女を際立たせているのだ。美術の歴史、美術が共有する文化、そして美術が人々に表現させる創造性など、美術に関するすべてを彼女は愛しているのだ。
「私はただ、他の人たちにも、私と同じように美術 を好きになってほしいだけなんです。」