米海兵隊岩国航空基地 -- 千歳航空基地で1月12日から22日まで実施されている在日米軍再編に伴う航空機訓練移転計画(ATR)で、海兵第224(全天候)戦闘攻撃中隊(VMFA-224)の隊員が異機種空中戦闘訓練(DACT)に参加した。VMFA(AW)-224はサウス・カロライナ州、米海兵隊ビューフォート航空基地を母基地とするF/A-18Dホーネット中隊で、現在、岩国基地に部隊交代プログラム(UDP)で駐留している。ニックネームは「ファイティング・ベンガルズ」。
太平洋地域における安全保障を支援するために、VMFA(AW)-224は航空自衛隊と共同でDACTを実施し、米軍と自衛隊の運用即応制を向上させた。
「DACTとは機種の異なる航空機との空対空戦闘訓練を意味し、通常、視界外にいる航空機との訓練になります。」と話すのは、VMFA(AW)-224のパイロット訓練担当官、セス・バイラム大尉。「岩国では制限があるため、通常は別のF-18を敵機とみなしての訓練しか実施できません。DACTをすることによって、異機種に対する空対空戦闘訓練をシュミレーションすることができます。」
多様な機種の航空機が提供されるため、VMFA(AW)-224はサウス・カロライナ州にある母基地とは異なる環境下で、基本戦闘起動、2機編隊戦闘機動、航空機戦術迎撃、攻撃/防衛対航空任務を計画通りに実行できた。
「基本戦闘機動とは、ニュートラルな位置から始まる一機対一機の航空機戦闘です。最初から有利な位置で訓練を始められるパイロットはいません。」と話すのは、VMFA (AW)-224のパイロット、アレキサンダー・ブランク大尉。「この訓練では、敵役の航空機に対して攻撃態勢をとり、模擬兵器を配備することを目標にしています。」
攻撃および防衛基本戦闘機動とは、空中戦(いわゆるドッグファイト)で使われる手法。この種類の空中戦は、敵機に対して攻撃的に有利な位置を得るために戦闘機を操作する技術である。
「2機編隊戦闘機動は2機対1機あるいは2機対2機で行うものですが、複数の航空機が飛行している中で任務が集中すると、少し激しい戦闘になります。」とブランク大尉。「航空機戦術迎撃とは、視界外にいる敵機を察知した場合に兵器を使用、または視界外にいる航空機が敵機だと確認してから兵器を使用するために、その敵機を攻撃できる位置まで航空機を移動させることです。自衛隊のF-15と訓練することで、我々はこれまであまり経験したことのない航空機に対する訓練ができました。機動力、推力、兵器システムに関しては、自衛隊の能力は米軍のそれとは大きく異なります。自衛隊の訓練は米軍よりずっと保守的なものです。」
部隊交代プログラム(UDP)の一環で、太平洋地域に半年間のローテーションで展開中のVMFA(AW)-224は、母基地の気候とは全く異なる千歳基地でのATRに参加した。これにより、普段はあまりない航空自衛隊パイロットとの空中戦をする機会に恵まれた。
「こんなに寒い天候や雪の中で航空機を飛行させることに隊員は慣れていませんが、ジェット機の性能は寒いほうがよくなります。」とブランク大尉。「エンジンは性能を上げますし、フライト・コントロールからは頻繁に応答を得られます。千歳基地での不利な点はただ一つ、慣れた飛行場ではないということです。千歳やこの周辺地域にはあまり詳しくありませんし、言葉の壁もあります。このために、普段あまり使わない技術が向上しました。」
東北や北海道の空でパイロットが空中戦を繰り広げるその舞台裏で、日米のパイロットが効率的に航空機を操縦できるよう、航空エンジン整備士、機体整備士、航空武器整備員、航空電子整備員、整備管理者が働いていた。
「整備士がいなければ、航空機を安全に飛行することはできません。」と話すのは、VMFA (AW)-224の航空機整備担当、ザカリー・ミラー兵長。「(整備士がいなければ)パイロットは自分が必要とする訓練を受けられなかったり、十分な飛行時間を飛べないこともあります。サウス・カロライナ州に比べて、千歳はずっと寒冷地であるという天候の違いのため、ここでは我々が普段は直面しない問題がありました。例えば、部品がいつもより早く消耗するので、頻繁に交換しなければならなかったり、機種ごとに航空機保守のための標準運用手順が様々ありますが、できる限り遵守しなければなりませんでした。ここには航空自衛隊の素晴らしいクルーがいてくれますし、私達には任務完了に必要な順応力がありますから、任務を成功させることができるのです。」
自衛隊と米軍はこれからも戦術手順や戦術技術を訓練し、相互運用性を拡張し、重要な関係を築いていく。そのため、この訓練は米軍と自衛隊が将来、連携して任務にあたる場合に備えたよい準備となった。
「このATR演習以外で、我々が米軍と一緒に訓練する機会はあまりありませんでしたから、この訓練は我々が関係を築き、運用能力を実践するのに役立ちました。」と海上自衛隊、管理部、広報担当官のシマタニ・アツヤ中佐は話した。