米海兵隊岩国航空基地 -- じりじりと照りつける太陽の下、眉から滴る汗が顎を伝う。ゆっくりと息を吸い、静かに吐き出すと、鳥のさえずりや周囲の話し声が遠ざかっていく。肺に染み込むのは火薬と熱いアスファルトの匂い。長い間待ち望んでいた競技の開始が近づくにつれ、アドレナリンが静かに湧き上がってくる。トロフィーを、名誉を、そして最高の射手としての称号を手にするのはいったい誰なのか?
2025年12月10日、 沖縄県キャンプ・ハンセンにおいて開催された海兵隊極東射撃競技会に、本州、沖縄、グアム、ベトナム、韓国から米海兵隊員たちが集結し、その技を競い合った。この競技会は、海兵隊射撃チームが主催する五つの地域射撃競技会のうちの一つ。毎年、2週間にわたって開催され、個人およびチームによるライフル・ピストル競技、ガスガン、歩兵射撃テストなど、9日間の実弾訓練と競技が実施される。このレベルで結果を出すためには、ただ参加するだけでは足りない ― 持久力、体力、規律、そして精度を高めるための数ヶ月にわたる準備と猛特訓が求められる。岩国基地射撃チームは、まさにその訓練をやり遂げた。
岩国基地射撃チームのメンバー枠はわずか12名。基地代表として競技に臨む資格を証明しようと、司令部司令中隊から海兵隊員と海軍兵が選考会に挑んだ。選考会の内容は次の通り。まず、屋内模擬射撃訓練装置(ISMIT)を使用した4時間にわたる近・中距離ピストル射撃および近・中・遠距離ライフル射撃。次にピストルの精度を試す戦闘ピストルプログラムの実施。さらに三つの標的に対してそれぞれ立射・膝射(しっしゃ)・座射で10発ずつ計3セット行う射撃シリーズ(標的の該当エリアの大きさは50セント硬貨ほど)、そして最後にライフルの速度と精度を測るテーブル5射撃コースが課された。選ばれた隊員たちはその後、4ヶ月間、持久力を高め、技術に磨きをかけながら競技に向けた準備を重ねた。
チームは合計218時間の猛訓練を積んだ。「素早く正確に、そして止まることなく動き続けられる体を作ることに特化した体力トレーニングに、38時間を費やしました」と語るのは、岩国基地の射撃場・訓練区域管理者兼屋内小火器射撃場(ISAR)責任者であるロバート・ナバロ一等軍曹だ。「120時間は長距離ライフル射撃に備えた屋内模擬射撃訓練、残り60時間はライフルとピストルの実弾訓練で、戦闘射撃の基礎・応用技術、高速標的射撃、そして従来のオリンピックスタイルの射撃に取り組みました」
岩国射撃チームがキャンプ・ハンセンに到着したとき、彼らは競技への意欲に満ちていた。「楽しんでこいと言われましたが、海兵隊員はもともと負けず嫌いですから」とナバロ一等軍曹は話す。チームが対戦したのは、全力で優勝を目指す200名の射手たち。初日の競技は、実弾射撃を安全に行えるか、競技に臨む準備ができているかを確認する基本的な武器・射撃技術テストだった。その初日だけで34名が失格となった。この競技に失敗の余地はなかった。
岩国基地射撃チームは基本を徹底しながら、競技ごとに着実に成績を積み上げていき、続く2週間も懸命に戦い抜いた。
「チームが日に日に上達していくのを見て、『自分が教えられることはすべて教えた、もう自分がいなくても大丈夫だ』と思えた瞬間が、本当に嬉しかったです」 ロバート・ナバロ一等軍曹
MCAS Iwakuni Shooting Team Group Photo
Photo by Gunnery Sgt. Miguel Rosales
U.S. Marines assigned to Headquarters and Headquarters Squadron (HHS), Marine Corps Air Station Iwakuni, pose for a group photo with the Shively trophy in the Indoor Small Arms Range at MCAS Iwakuni, Japan, Feb. 20, 2026. The Iwakuni shooting team won the 2025 Fare East Marine Corps Marksmanship Competition pistol trophy. (U.S. Marine Corps photo by GySgt. Miguel A. Rosales)
岩国基地司令部もナバロ一等軍曹同様、チームへの信頼を示した。
極東射撃競技会への参加が提案されたとき、司令部は即座に承認した。出張費、命令書、フライトの手配など、あらゆる事務的なサポートを惜しまなかった。それだけにとどまらず、チームピストル競技当日には、岩国基地 司令部司令中隊(HHS)の司令官、フェデリコ・メンディサバル中佐が自ら、キャンプ・ハンセンまで足を運び、隊員たちを激励した。
岩国基地ピストルチームはその週の予選をすべて通過し、決勝進出を果たした。照りつける太陽の下、メンディサバル中佐らが見守る中、プレッシャーは最高潮に達していた。チームは呼び上げられる色の順番に従いながら、様々な距離の標的に、最速かつ最高の精度で狙い撃たなければならなかった。財務管理官のダコタ・ジェームス少尉、ISARスタッフのアンドリュー・ウィリアムズ軍曹とクリスチャン・アバルカ伍長、そして岩国基地人事管理センターのキアナ・ウィルソン伍長。この四名が、この瞬間のために数ヶ月間準備を重ねてきた。
16発、2マガジン(弾倉)を携え、岩国基地ピストルチームは決勝に臨んだ。闘志をみなぎらせた眼差しで射撃ラインに立つ。最初の射手が色の順番を耳にした瞬間、競技は始まる。海兵隊員たちは色分けされた標的から次の標的へと全力疾走し、移動しながら再装填し、それぞれ異なる射撃姿勢で標的を射撃する。各射手は武器をクリアしてスタート地点に全力で戻り、次の3名が異なる色の順番で同じ訓練を実施する。4名全員がスタート地点に戻るまで、タイムは止まらない。
「『うまくできましたか?』と聞いてくる隊員たちに、『当たり前だろ、最高だったぞ』と言ってやりました」とナバロ一等軍曹は振り返る。「サッカーをしているわが子を見守る、父親のような気持ちでした。ケガをしないかとか、危険なことはしないかなどは何も心配していませんでした。チームはプロフェッショナルとして規律正しく、これまで訓練してきたことをそのまま、やり遂げてくれました。」
チームが最終競技を終えてから30分後、優勝者が発表された。
「優勝は驚きませんでした」とナバロ一等軍曹は興奮気味に語る。「女性隊員たちは泣いていて、男性隊員たちも目を潤ませていました。本当に感動的な瞬間でした」
岩国基地の海兵隊員にとって、歴史的な瞬間だった。海兵隊極東射撃競技会への参加は、実に10年以上ぶりのことだったからだ。「岩国が優勝したと聞いて、当然の結果だと思いました。沖縄が連続して優勝してきたのは、沖縄が優れていたからではなく、岩国が参加していなかったからです。沖縄はライフルもピストルも常に訓練できる環境にありますが、岩国にはその環境がありません。ハンデがあることを自覚しているからこそ、より一層厳しく訓練しているのです」と語るのは、元海兵隊員のジャスティン・テイラーさんだ。テイラーさんは、2009年に最後に競技会に参加した岩国基地射撃チームのメンバーである。
優勝した岩国ピストルチームには、シャイブリー・トロフィーが贈られた。岩国が長らく不参加だった間、トロフィーはずっと沖縄に置かれていた。岩国基地ピストルチームの優勝により、トロフィーはついに岩国へと持ち帰られ、HHS 司令部に手渡された。「司令部は我々の心強い味方でした。競技を見守り、その30分後には、一緒に優勝の瞬間を共に味わってくれました」とナバロ一等軍曹は話す。「司令部が全てサポートしてくれましたから、トロフィーは司令部にこそふさわしいものです。彼らのサポートがなければ、優勝はあり得ませんでした」