米海兵隊岩国航空基地 -- 2013年8月21日、シリアの夏の夜の静けさが突然、破られた。空を切るロケット弾のうなり音が響き、それに続いたのは爆発音ではなく、静寂だった。数分のうちに、その静寂は住民のせきとあえぎ声に取って代わり、やがて恐怖の悲鳴へと変わっていった。無色無臭の神経ガス、サリンの煙がグータの街を覆ったのである。シリア大統領バッシャール・アル=アサドの命令によるこの攻撃で、男女子供の区別なく、1,400人以上のシリア人が犠牲になった。
化学兵器禁止条約により、化学兵器の使用は禁止されている。この条約は193ヵ国の締約国が批准または加入している多国間条約であるが、それでも化学兵器使用の可能性を完全に排除することはできない。
1996年4月、米海兵隊第31代総司令官チャールズ・クルラック大将は、化学・生物・放射性物質・核(CBRN)または高威力爆発物による事件・事故に対応するめの化学生物事故対応部隊(CBIRF)を発足させた。現在、この部隊に所属する海兵隊員はCBRN防衛専門家として知られている。彼らの任務は、CBRN関連事件の脅威を排除し、所属部隊に装備への信頼性とCBRNに関する基本的な知識を教育することである。
米海兵隊岩国航空基地では、常駐のCBRN専門家が第171海兵航空師団支援中隊(MWSS-171)に所属している。MWSS-171の支援中隊長であるCBRN防衛将校、ミケル・ロバーツ3等准尉とCBRN主任のアントニオ・カルバハル二等軍曹の指揮の下、基地とその周辺の即応態勢を保つため、岩国基地の人員は年間を通じて訓練を受けており、CBRN防衛チームと訓練する機会も与えられている。
カルバハル二等軍曹は「我々は、海兵隊員がCBRN事態に遭遇した場合に自分自身を守る方法を理解できるよう訓練しています」と説明する。「各部隊にはそれぞれ固有の任務がありますが、CBRN条件下であっても、それを遂行しなければなりません」
「この地域は注視すべき国々に囲まれています」とロバーツ3等准尉。「我々が岩国基地に常駐し、訓練を実施していることを示すことが、将来起こりうる衝突に対する抑止力となるのです」
MWSS-171のCBRN防衛チームは、全海兵隊員に義務付けられている年度ごとのガス室訓練を2つの主要部分に分けている。個人生存技能訓練と個人防護装備信頼性訓練(IPECE)である。
個人生存技能訓練では、CBRN事故で生き残るための17の必須技能を学ぶ。これらの必須技能には、識別、装備の名称と情報、防護装備着用時の基本的な動作と必要な活動、防護装備着用時の補助、装備の交換、除染などが含まれる。
IPECEでは、隊員を制御された環境下でCSガス(一般的な催涙ガス)に暴露させる。これにより、装備への信頼性を深め、CBRN環境下における装備の使用方法を理解する。
ロバーツ3等准尉は「CBRNが重要なのは、人々が日常的に直面する危険ではないからです。しかし、一度事故が発生すると、それがすべてを支配してしまいます」と話す。「このような状況に対処できる専門知識を持つ人員が常駐していることで、指揮官はどのように部隊を準備させるべきか、またCBRN物質に暴露された際に何が必要となるのかを的確に理解できるのです」
CBRN防衛の即応態勢がいかに重要かを考えると、本州唯一の米軍CBRN防衛チームであるMWSS-171のCBRN海兵隊員が、すべての訓練において全隊員に適切な情報が確実に伝わるよう教育する能力を持つことが不可欠である。カルバハル二等軍曹は「この内容を上手く教えられるだけでなく、最高レベルから最低レベルまで、記憶に残るような方法で教えることが我々の仕事です」
と説明する。「魅力的に教えられなかったり、教えることができなければ、問題になります」
教壇での指導方法や一般的な指導方法は、CBRN海兵隊員の軍事職業学校では教えられていないが、それは彼らの仕事の大きな部分を占めている。しかし、訓練指導中にCBRN海兵隊員が示す自信に満ちた姿は、彼らの高い適応力と技術を物語っている。
世界中の多くの国々がCBRN能力を保有している。化学兵器禁止条約の存在にもかかわらず、すべての状況においてCBRNが使用されないことを保証することはできない。実際、私たちが主流メディアで目にするよりも頻繁に世界中でCBRN事態は発生している。CBRN事態が起こる可能性を理解することで、常に準備を怠らないことの重要性を再確認できる。米海兵隊、アメリカ合衆国、そしてその同盟国を支援するため、すべての訓練から学んだ技術をいつでも使用できるよう態勢を整えておくことが重要なのである。